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労働組合法上、不当労働行為自体に対する罰則はありません。
もっとも、不当労働行為に対して救済命令がなされた場合、救済命令に違反すると罰則の対象となります。
また、不当労働行為自体は、民法上の不法行為(第709条)に該当するため、民事上損害賠償責任を負う可能性があります。
以下に、
①不当労働行為の類型
②労働組合法上の罰則
をまとめておりますので、ご参照ください。
目次のサンプル
労働組合法第7条各号に、不当労働行為の類型が列挙されています。
滋賀県庁のサイトに不当労働行為の類型・具体例について分かりやすく記載されていたため、下記の表に抜粋・まとめております。
【不当労働行為】
1号 ・不利益取扱い
1号 ・黄犬契約
2号 ・団交拒否
2号 ・不誠実団交
3号 ・支配介入
3号 ・組合間差別
3号 ・経費援助
4号 ・報復的不利益取扱い
類型 内容 具体例 不利益取扱い
(同条第1号)労働組合に関わったことを理由として労働者を解雇したり、人事評価を下げたりなど、労働者にとって不利益な取扱いを行うこと
・労働組合に加入しているからという理由で、昇給が行われなかった。
・組合に加入したことを理由として、降格処分を行った。
・ストライキに参加したことを理由に、組合員を解雇した。
黄犬契約
(同条第1号)労働組合に加入しないことや、労働組合から脱退することを採用時に約束させること ・入社時に、組合に加入しないという内容の誓約書を書かせた。
・入社希望者が合同労働組合に加入していることを嫌って、面接時に脱退を要求した。
団交拒否
(同条第2号)労働組合が申し入れた団体交渉を、正当な理由がないのに拒否すること ・組合の上部団体の役員が団体交渉に参加しようとしていることを理由に、団体交渉を拒否した。
・組合に対し、要求事項について文書での説明が行われない限り団体交渉に応じないと主張した。
・交渉事項について、裁判で係争中であることを理由に団交を拒否した。
不誠実団交
(同条第2号)団体交渉には応じるものの、権限のない者しか出席しない、十分な説明もなく要求を拒否するだけ、などの不誠実な交渉態度をとること ・組合要求について「解決済みである」との態度に終始し、具体的な理由や根拠を一切説明しなかった。
・賃上げを議題とする団交に対し、賃金の決定権を持たない専務しか出席しなかった。
・多忙を理由に、団体交渉の開催日を引き延ばし続けた。
支配介入
(同条第3号)労働組合の結成や運営を妨害したり、口出しをしたりなどの干渉を行い、労働組合の自主性を損なわせようとすること ・組合がストライキを決行すれば組合員を処分することを匂わせる文書を掲示した。
・営業所の副所長が組合員に対し、労働組合から脱退すれば昇格させてやると持ち掛けた。
・無回答の場合は処分対象になると明記して、全社員に組合活動への参加について記名式アンケートを行った。
組合間差別
(同条第3号)複数の労働組合がある場合に、特定の組合だけ優遇したり、逆に不利に扱ったりすること
・従来の組合には組合事務所を貸与しているのに、新たに結成された組合には貸与をしなかった。
・会社に協力的な第二組合の結成を支援し、新入社員に対して第一組合に加入しないよう制約させた。
経費援助
(同条第3号)労働組合の自主性を損なわせる目的で、組合やその組合員に金品を提供したり、必要以上の設備を与えたりなど、経理上の援助を行うこと
・出産祝や住居新築祝として組合役員に多額の金銭を提供することで、組合が上部団体に加入することを阻止しようとした。
・組合の役員に対し、役員になる前の平均賃金と現在の賃金との差額を、手当として毎月支給した。
・業務委託料という名目で、別組合に対し毎月金銭を支給した。
報復的不利益取扱い
(同条第4号)不当労働行為の救済申立てを行ったり、労働委員会での不当労働行為審査や争議調整の場で発言したり、証拠の提示を行ったりしたことを理由に、不利益な取扱いをすること ・組合が救済申立てを行ったことに対し、組合役員が横領をしたとして、確たる証拠や十分な調査もないまま懲戒解雇した。
・不当労働行為事件の審査において、会社側の証人として出廷した従業員は、出廷時間を有給休暇として取り扱う一方、組合側の証人は無給とした。
・組合が救済申立てを行ったことに対し、組合を一方的に非難する見解文を社内に長期間掲示し、申立ての取下げを強要した。
・労働争議のあっせんを申請した従業員を非難し、申請を取り下げるよう圧力をかけた。
<引用元:不当労働行為の具体例> 滋賀県庁HPより
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また、上記のように、労働組合からの脱退を約束させるなどの黄犬契約は不当労働行為に該当しますが、
不当労働行為それ自体(第7条)に対して、労働組合法上は罰則は規定されていません。
ただし、不当労働行為に対して救済命令の申立てがなされ、その命令に違反した場合は、罰則の対象となります(下記の赤字部分をご参照ください。)
【罰則】
・28条 救済命令違反(行政訴訟後、確定判決があった場合)
・28条の2 偽証 <証人>(審問時)
・29条 守秘義務違反
・30条 帳簿書類不提出、検査拒否・妨害・忌避(検査時)
・31条 両罰規定(30条違反)
・32条 救済命令違反
・32条の2 出頭・陳述拒否、物件提出拒否、宣誓拒否(審問時)
・32条の3 偽証 <当事者>(審問時)
・32条の4 審問妨害(審問時)
・33条 清算人の不正行為
<根拠法令:労働組合法 第5章 罰則>
第五章 罰則
第二十八条 救済命令等の全部又は一部が確定判決によつて支持された場合において、その違反があつたときは、その行為をした者は、一年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十八条の二 第二十七条の八第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
第二十九条 第二十三条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十条 第二十二条の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは帳簿書類の提出をせず、又は同条の規定に違反して出頭をせず、若しくは同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同条の刑を科する。
第三十二条 使用者が第二十七条の二十の規定による裁判所の命令に違反したときは、五十万円(当該命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が五日を超える場合にはその超える日数一日につき十万円の割合で算定した金額を加えた金額)以下の過料に処する。第二十七条の十三第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により確定した救済命令等に違反した場合も、同様とする。
第三十二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がないのに、第二十七条の七第一項第一号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して出頭せず、又は陳述をしない者
二 正当な理由がないのに、第二十七条の七第一項第二号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して物件を提出しない者
三 正当な理由がないのに、第二十七条の八(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して宣誓をしない者
第三十二条の三 第二十七条の八第二項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、三十万円以下の過料に処する。
第三十二条の四 第二十七条の十一(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して審問を妨げた者は、十万円以下の過料に処する。
第三十三条 法人である労働組合の清算人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、五十万円以下の過料に処する。
一 第十三条の五に規定する登記を怠つたとき。
二 第十三条の七第一項又は第十三条の九第一項の公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
三 第十三条の九第一項の規定による破産手続開始の申立てを怠つたとき。
四 官庁又は総会に対し、不実の申立てをし、又は事実を隠ぺいしたとき。
2 前項の規定は、法人である労働組合の代表者が第十一条第二項の規定に基いて発する政令で定められた登記事項の変更の登記をすることを怠つた場合において、その代表者につき準用する。
Q 労働組合からの脱退を強要させるなどの不当労働行為には、何か罰則はありますか?
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